遺産分割審判とは①判決との違いと注意点(公開・既判力との関係)

掲載日 : 2013年9月18日

遺産分割は、共同相続人の協議によります(民法907条1項)が、それが調わないときは、それを家庭裁判所に「請求」できます(同条2項)。

審判と判決との違い=公開か否か
この請求が審判申立で、これがなされると家庭裁判所は「遺産の分割」「審判」をすることになります(家事事件手続法〈以下、単に法といいます。〉39条別表第二12項)。

審判には様々な意味がありますが、ここでは「家庭裁判所の終局的な裁判」という意味として説明します。

普段耳にする「判決」と「審判」との一番の違いは、判決については憲法82条1項から審理等の「公開」が求められる点です。
判決は当事者の主張する権利義務の確定を目的とする裁判です。この点、遺産分割においては、被相続人の死亡によって、法定相続分に応じた抽象的な数字的割合としての権利が、既に各共同相続人に承継されており(899条)、当事者の権利義務は既に確定しているといえます。遺産分割審判も、裁判所のする判断なので裁判の一種なのですが、具体的相続分に応じた相続財産に対する価格割合を分配する作業にすぎず、権利義務の確定を目的とする裁判である判決とは異なるため、非公開が認められており、この点が判決との大きな違いといえます。いわゆる「純然たる訴訟事件」ではないということです(法定乃至具体的相続分については「具体的相続分①法定相続分との違い」を参照してください。)。

【憲法82条(裁判の公開)】
裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行うことが定められています(第1項)。
ここでいう裁判とは、権利義務等に関する「純然たる訴訟事件」のことをいいます。このような裁判を国民の目にさらすことで、権利義務等の判断が公正になされるよう定められたものです。審判も裁判の一種ですが、権利義務等に関するものではないので、ここでの公開の要請は働かないとされています。

すなわち、遺産分割は「相続人その他の…権利義務の範囲は相続開始によって一応確定していて…その確定した権利の内容を具体化することでしかない」(谷口外編〈伊東担当〉「新版注釈民法(27)相続(2)」有斐閣361頁)ことから、権利義務に対する判断ではないので「非公開」でなしてもかまわないとされます(法33条)。

その理由付疑問を示す見解も多いですが、遺産分割の紛争は家族間の問題なので、特にプライバシーの保護が求められ、そのような紛争を非公開の審判で判断することは望ましいと思われます。

審判における注意点(既判力との関係)
審判では、例えば、親Aが死亡した場合の子B、C間の遺産分割において、甲不動産の名義がAのものであった場合、甲がAの遺産であることを「前提」に遺産分割されます。ところが、真実の所有者は自らお金を出して買ったBであったとき、Bは遺産分割審判に納得いかなければ、甲はB自らのものであるとして、もう一度民事訴訟を起こせます。
そして、判決で、甲はB自らのものであると判断されると、権利義務の判断については、「甲はBのもの」という判決が通用し拘束されることになります(既判力)。結果として「甲はAのもの」とした審判は間違っていたものとなり、その効力は失われます。ただ、審判とはその程度のもので権利義務等を確定する訳ではないので、憲法82条1項等の要請に応じる程のものではないとされる訳です。この趣旨を述べたのが、以下の最高裁判決です。

最大判昭和41年3月2日(家月18巻6号153頁以下)
審判手続においてした右前提事項に関する判断には既判力が生じないから、これを争う当事者は、別に民事訴訟を提起して右前提たる権利関係の確定を求めることをなんら妨げられるものではなく、そして、その結果、判決によって右前提たる権利の存在が否定されれば、分割の審判もその限度において効力を失うに至るものと解される。

この理由付けに対する批判も多いのですが、実務はそれを前提に動いています。従って、このような「前提問題」に争いがある場合、前述したBのように「ちゃぶ台返し」が認められるケースもあるので、遺産分割審判の申立の取下げを勧告されることが多く、注意が必要です。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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