遺産分割協議が無効になる場合②錯誤と詐欺/遺言に違反する分割

掲載日 : 2013年9月15日

錯誤と詐欺
遺産分割協議は、相続人間の話し合いによってされますが、この場合、民法の意思表示に関する一般原則は排除されていませんから、そこに錯誤、詐欺があった場合、その無効、取消を主張できることになります(95条、96条)。

例えば、特定の土地の分割方法を定めた遺言の存在を知らないでされた遺産分割協議の意思表示に要素の錯誤がないとはいえないとされた例があります(最小1判平成5年12月16日判タ842号124頁以下)。

遺言に違反する分割
遺言に反する遺産分割協議は可能でしょうか。この点については、いずれの判例も遺言を覆す遺産分割協議を認めていないようです。

大地判平成6年11月7日(判タ925号245頁以下)は「相続人間における遺産分割が、贈与契約ないしは交換契約等として、遺言内容の事後的な変更処分の意味でその効力を保持すべき場合が存するとしても、その合意の存在をもって、遺言執行者の責務を免除する性質及び効力を有するものと解することはできない。」とし、そのような合意すら成立しないままになされた遺言内容と異なる登記について遺言執行者による抹消登記請求を認めました。つまり、遺言を覆す遺産分割協議は認められないということです。

東高判平成11年2月17日(金商1068号42頁以下)は、遺言内容と異なる遺産分割協議の無効確認を求めた遺言執行者の訴えを退けました。
ただ、これは遺言によって不動産の遺贈を受けた者がこれを放棄した(986条)ことに関するものでした。そこで、当該不動産を含んだ全遺産について相続人全員で遺言と異なる協議をしたというものです。この場合、相続人ではない第三者である遺言執行者が主張するとおり、協議無効が認められたとしても、遺言執行者としては仕事のしようがありません。遺贈は効力を失っており、共同相続人全員の望まない形での遺言執行は意味がないからです。そのこと故に遺言執行者の無効確認請求は退けられたに過ぎないと解されます。
判決としては、かかる遺産分割協議を「本件遺言によりいったん取得した各自の取得分を相互に交換的に譲渡する旨の合意をしたものと解するのが相当」としており、遺産分割協議によって遺言の効力を失わせしめるものではありません。同判例のコメントでも述べられているとおり「本件の場合とは異なるが、遺言で遺言執行者の報酬が定められている場合に、これを無にするような遺産分割協議がされたときは、損害賠償の問題として取り扱うことになろうか。」ということであり、遺言そのものを覆す遺産分割協議は、妨害行為(1013条)として許されないものと解されます(星田「遺言執行に関する最近の問題」金法1595号26頁以下)。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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