非嫡出子相続差別違憲決定①争点と最高裁判断

掲載日 : 2013年9月10日

民法900条4号の問題の所在

民法900条4号は「子…が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1と…する」としています。
嫡出子といっても、法的には幾通りもの種類があるのですが、世間一般的には「婚姻関係にある男女の間で出生した子」という意味で使われることが多いです。

つまり、A男が、結婚したB女との間に生まれてきた子Xが嫡出子であり、結婚していないC女との間に生まれてきた子Yが非嫡出子となります。
例えば、Aが死亡し、その相続人がXとYだけしかおらず、その相続財産が900万円の現金しかなければ、お互いの法定相続分はXが600万円、Yが300万円ということです。

争点(憲法14条1項との関係)

民法を解釈すれば、遺言等がない限り、婚姻関係のない男女の間に生まれた子(非嫡出子)に認められる相続分は、嫡出子の半分とされています。このため、例えば、嫡出子Xが遺産分割審判を申立てれば、家庭裁判所としても、民法のそのような解釈を前提として、審判をします(907条2号、906条)。

今回最高裁で問題になったYも、事案はそれほど単純ではないでしょうが、非嫡出子であることを理由に相続分が嫡出子の2分1であるという趣旨の審判を受けていました。
しかし、Yはこうした民法の規定が、憲法14条で保障される「法の下の平等」に反して、無効なのではないかという主張を行いましたが、東京高裁はこの主張を退けました。そこで、Yは、これに対し特別抗告をしました。

※憲法14条1項は「すべて国民は、法の下に平等であって…差別されない。」としており、立法府に裁量は認められるものの、合理的理由のない差別的取扱いは許されないと解されています。

これを受けた最高裁大法廷決定は、平成25年9月4日、Yの主張を認めました。

最大決平成25年9月4日

最高裁判決の詳細は最高裁のHP の通りですが、大切なのは以下の点です。

(下線は、村上の指摘)
昭和22年民法改正時から現在に至るまでの間の社会の動向、我が国における家族形態の多様化やこれに伴う国民の意識の変化、諸外国の立法のすう勢及び我が国が批准した条約の内容とこれに基づき設置された委員会からの指摘、嫡出子と嫡出でない子の区別に関わる法制等の変化、更にはこれまでの当審判例における度重なる問題の指摘等を総合的に考察すれば、家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかであるといえる。
そして、法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても、上記のような認識の変化に伴い、上記制度の下で父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているものということができる。
以上を総合すれば、遅くともAの相続が開始した平成13年7月当時においては、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきである。
したがって、本件規定は、遅くとも平成13年7月当時において、憲法14条1項に違反していたものというべきである。

ちなみに、そこで指摘されたキーワードを解説すると以下のとおりになるかと思います。

1)民法改正時から現在に至るまでの間の社会の動向等
昭和22年の民法改正時においては、「法律婚の尊重」の目的により、嫡出子と非嫡出子との間に相続分の差をつけていました。相続分を半分にすることにより、非嫡出子が減ることも想定されていました。
これまで最高裁が民法900条4号を合憲としてきたことには、法律婚の尊重という考え方が背景にあります。しかし、民法改正時から現在に至るまでにおいて、家族の在り方や国民の意識等の背景事情が大きく変化してきています。

2)諸外国の立法のすう勢
諸外国においても非嫡出子の相続格差を撤廃する方向で立法整備が進んでおり、その存在意義を疑問視する声があがっていました。

3)個人としての尊重、権利の保障
子は親を選択する余地がないため、親の行為の不利益を子が負うべきではありません。子を個人として尊重し、権利を保障すべきだという考え方が確立されてきています。

解決済みの事案への影響
最高裁の決定は、当該事件に関するもので、当該事件の限りにおいて法的効力を有するにすぎないと解されています(これが通説で、個別的効力説といいます。)しかし、今回の決定を受け、今後は非嫡出子について同様の判決が下されることが予想されます(このような状態を「事実的」効力といいます。民法900条4号を前提に審判しても違法という訳ではないのですが、最高裁にいけば同様に覆されてしまうので、事実上そのような審判はなされないといった意味合いです。通説は、個別的効力説を前提にしながらも、最高裁の違憲判断にはこのような効力が存在することも認めています。)。ただ、民法900条は、相続法に関する基本規定ですから、その影響力を考え、最高裁は既に確定された遺産分割の審判及び裁判、その他解決済みの事案については、再度争えない、としました。

本決定の違憲判断は、Aの相続の開始時から本決定までの間に開始された他の相続につき、本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判、遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではない

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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