借地上の建物を譲渡する場合における借地権譲渡又は転貸に関する代諾許可の裁判とは?

掲載日 : 2013年9月9日

借地権の譲渡又は転貸についての地主の承諾の必要性
借地人が借地権の譲渡又は転貸をするには地主の承諾を得なければならず(民法612条1項)、もし地主に無断で借地権を譲渡又は転貸した場合、地主はそのことを理由に借地契約を解除することができます(民法612条2項)。
従って、借地権を譲渡又は転貸したいならば、予め地主と交渉し、その承諾を得る必要があります。

この場合、地主から承諾料の支払を求められることもあるでしょうが、慣行上相当な範囲の金額であれば、これを支払って地主の承諾を得ることになるでしょう。

なお、相続によって相続人が被相続人から借地権を取得する場合のように包括的に権利義務を承継する場合には、譲渡とは扱われず、借地権の承継について地主の承諾は不要です。

土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可
地主が借地権の譲渡を地主が全く承諾しない場合や過大な承諾料を支払わないと承諾しないと主張している場合、借地人はそのままでは借地権を譲渡できません。

そこで借地借家法19条1項は、借地人が借地権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が借地権を取得し、又は転借をしても地主に不利となるおそれがないにもかかわらず、地主がその借地権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、借地人は、裁判所に対し、地主の承諾に代わる許可(以下、「代諾許可」といいます。)を与えるよう申し立てることができると定めています。

この代諾許可を得れば、借地人は地主の承諾がなくとも借地権を譲渡することができます。

この申立は、普通賃貸借だけでなく定期借地権でもできますが、借地の上に建物があり、これを第三者に譲渡しようとする場合でなければできません。

1)申立の手続
申し立てる相手方は地主、申し立てる裁判所は借地の所在地の管轄裁判所です。
申立は必ず借地権の譲渡又は転貸の前にしなければなりませんが、申立の時点で借地権の譲受予定者(又は転借地人)は特定しておく必要があります。

2)代諾許可が認められるための要件

  • 申立が認められるには、借地権の譲渡や転貸をしても地主に不利とならないといえなければなりません。
    地主にとっては、借地人がきちんと賃料を支払ってもらえるかが一番の関心事ですから、まずは譲受予定者の資力や社会的・人的信用について疎明していくことになります(なお、転貸の場合には譲渡の場合と異なり、借地人が地主に対して賃料を支払い続けるので 、借地人の資力が十分であれば転貸人の資力は問題になりません。)。
    さらに、借地人の残存期間、借地に関する従前の経過、借地人の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情も考慮されることになります(借地借家法19条2項)。
  • 承諾料としての財産上の給付
    また、裁判所は、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、借地人の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができます(借地借家法19条1項後段)。
    代諾許可を命じる多くの裁判例では、同時に借地人に対して「財産上の給付」すなわち承諾料の支払を命じており、その承諾料の額は借地権価格の10%程度を基準に個別事情により若干の増減をして定められることが多いです。
    「借地条件の変更」としては、多くの場合賃料の改定がありますが、存続期間の変更も考えられます。
  • 鑑定委員会
    裁判所は、原則として鑑定委員会の意見を聞いてからこれらの決定を行います。
    鑑定委員会は、弁護士、不動産鑑定士、建築士や有識者などで構成される3名の鑑定委員から構成されます。

地主の介入権
土地の借地権の譲渡又は転貸の代諾許可の申立てがなされた場合、地主は、借地権が第三者に譲渡又は転貸されることを阻止するために、自らが借地権の譲渡又は転貸を受ける旨を申し立てることができます(同法19条3項)。

この申立が認められた場合、地主は優先して借地権を買い取ることができますので、これを地主の「介入権」と呼んでいます。
地主としては「承諾料をもらうより自分で買い取った方が良い」と考える場合にこの申立をすることが考えられます。

この申立は、裁判所が定めた一定の期間にする必要があります。
裁判所は、この申立があり、要件が満たされていれば、建物と借地権との相当の対価又は転貸の条件を定めて建物と借地権の譲渡を地主に命じ、又は、建物の相当の対価と転貸の条件を定めて建物の譲渡と借地の転貸を地主に命じることになります。
裁判所は、原則として鑑定委員会の意見を聞いてからこれらの決定を行います。

敷金の取扱い
ところで、借地権が地主の承諾を得て旧借地人から新借地人に移転された場合であっても、旧借地人と新借地人との間で特段の合意がない限り、敷金に関する権利義務関係は新賃借人に承継されません。

そのため、代諾許可の裁判においても、敷金が原則として譲受人に承継されないことを前提にしつつ、当事者間でも敷金の承継の有無を明確にしておく必要があります。

【コラム執筆者】
弁護士法人古家野法律事務所
弁護士 古家野 彰平