具体的相続分とは③寄与分の計算例と特別受益との比較

掲載日 : 2013年9月5日

具体的相続分の計算にあたって、共同相続人間の実質的公平を図るため、相続人が被相続人の財産を維持または増加するために貢献した分を考慮することになります。

寄与分も「特別の寄与」が要求され(904条の2の1項)、以下の例で検討してみます。

母Aが死亡(既に父は死亡)した場合に子として姉妹B、Cと弟Dがいます。
Aが、死亡時、甲土地建物(時価2,000万円相当)と乙マンション(時価1,000万円相当)を有していたとします。

例えば、DがAの療養看護をしていた場合でも、通常のものであるならば「直系血族…は、互いに扶養をする義務がある」とされている(877条1項)ので、その義務の範囲内のものと評価されるます。ただ、Dの療養看護が特別なものでその寄与分が1,200万円と裁判所によって定められた場合(904条の2の2項)、Dの具体的相続分は以下の通りとなります。

ケース8 : 寄与分が認められた場合
Dの具体的相続分1,800万円
=みなし相続財産(甲+乙-Dの寄与分1,200万円=1,800万円)×1/3
+Dの寄与分

寄与分が等しく認められた場合
この点についても争いが生じがちです。例えば、Bも療養看護をしていたと主張してきたとします。Dとしては「Bの寄与は通常の範囲であり、自分(D)の寄与こそ特別の寄与だ。」と主張する訳です。これを特別受益の場合と比較して、裁判所が「Bの寄与分は600万円であり、Dの寄与分は600万円である」と認定するとどうなるでしょうか。

ケース9 : 寄与分 B=D
Dの具体的相続分1,200万円
=みなし相続財産(甲+乙-Bの寄与分600万円-Dの寄与分600万円)×1/3
+Dの寄与分

これをB、D互いの寄与分が認められなかった【ケース3】〈Dの具体的相続分1,000万円〉と比較するとDは200万円得をしています。

特別受益の場合との比較
この結果は、特別受益が等しく認められた【ケース2】〈Dの具体的相続分800万円〉と違うということになります。つまり、相手方と等しく認められるにしても、特別利益の場合は損をしますが、寄与分は得をするということです。

その意味で、寄与分の立証の比重の置き方は、特別受益の場合とは異なるといえます(ケース2、3については、具体的相続分②を参照ください。)。

特別受益と寄与分の計算の順序
その他、特別受益と寄与分の計算をどのような順序でするか(何れかを先にするのか、同時にするのか等)、超過特別受益のある場合の【ケース7】について、
(1)▲200万円はB、Cがどのような基準で幾ら負担するか、
(2)例えば【ケース8】のDの寄与分も存在する場合の取り扱い(Dの特別受益▲200万円をDの寄与分1,200万円から清算するか否か)といった点が議論されています。

具体的相続分は基礎的概念ですが、詰めて考えるとよくわからない点も多いので、疑問がある場合は、弁護士等の専門家にご相談ください。

【関連コラム】
具体的相続分とは①法定相続分との違い
具体的相続分とは②特別受益の計算例と立証のポイント

【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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