具体的相続分とは①法定相続分との違い

掲載日 : 2013年9月3日

遺産分割を考える上で、理解しておかなければならない概念として「具体的相続分」というものがあります。皆さんが聞き慣れている「法定相続分」という概念と比較しながら、簡潔に説明したいと思います。

法定相続分
法定相続分とは、民法900条にいう「相続分」であり、そこでは「同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。…子…が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。」とされています。

例えば、母Aが死亡(既に父は死亡)した場合に子として姉妹B、Cと弟Dがいるとき、B、C、Dの相続分は相等しいとして「3分の1」ずつだとされるのが、法定相続分です。
法律で定められた相続分ですが「抽象的な数字的割合」に過ぎず、その対象が何であるかも明確ではありません。あえていうなら、民法896条にいう「被相続人の財産に属した一切の権利義務」ということになるでしょう。

ですが、一般的に聞き慣れているのは、この意味での相続分だと思います。

具体的相続分
これに対し、具体的相続分とは、共同相続人間の実質的公平を図るため、「特別の受益」や「特別の寄与」が考慮された相続分となります。

1)特別の受益
民法903条1項末尾にいう「相続分」であり、そこで「共同相続人中に、被相続人から…婚姻…のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし…前三条(900乃至902条)の規定により算出した相続分の中からその…贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。」とされているものです。

例えば、Aが、死亡時、甲土地建物(時価2,000万円相当)と乙マンション(時価1,000万円相当)を有していたとします。ところが、Dが学生時代に海外留学費(以下、留学費といいます。)として1,200万円の援助を生前Aから受けていた場合、甲と乙の価額に留学費を加えた価額を「みなし相続財産」とし、これに対するDの法定相続分3分の1の中から、留学費を除いたものが具体的相続分です。
数式で表すと以下の通りとなります。

ケース1 : 特別受益がある場合の具体的相続分
Dの具体的相続分200万円
=みなし相続財産(甲2,000万円+乙1,000万円+留学費1,200万円=4,200万円)×1/3
-留学費

2)特別の寄与
民法904条の2の1項末尾にいう「相続分」も具体的相続分の意味であり、そこにおいて「共同相続人の中に…被相続人の…療養看護…により被相続人の財産の維持…について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から…その者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条…の規定により算出した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする」とされているものです。

例えば、Aが高齢により、Dの家族が同居してDと家族が付き切りでAの療養看護をしていたというケースが想定されます。
これがA自ら費用を払って施設に入っていたとすると、その分だけAの財産が減っている筈です。つまり、Dの貢献によりAの財産はある程度減少を免れた訳ですが、この場合、法定相続分の通りに遺産を分割すると、Dの貢献が認められないこととなり、不公平な結果となります。そこで、Dの貢献分を考慮したものが具体的相続分となります。

このように、具体的相続分とは、相続人が承継する「相続財産に対する価額」ということであり、法定相続分とは異なって、具体的な「相続財産」を対象とした「価額」ということになります。

具体的相続分を計算する上では、共同相続人間の実質的公平を図るのが相当であって、生前にされた「特別の受益」や「特別の寄与」が考慮されるということです。

【関連コラム】
具体的相続分とは②特別受益の計算例と立証のポイント
具体的相続分とは③寄与分の計算例と特別受益との比較

【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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