自筆証書遺言の要件③氏名の自書と押印

掲載日 : 2013年8月29日

遺言は厳格な要式行為として、「この法律に定める方式に従わなければ、することができない」とされ(960条)ており、その方式=要件を充たさないと無効となります。

自筆証書遺言の要件は、「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」とされています(968条1項)。自筆証書遺言は簡便なため、多く利用されていますが、要式性を欠いて無効になるケースも多く見られます。
そこで、自筆証書遺言の要件のうち、氏名の自書と押印に関して日常的に問題になる点について検討してみたいと思います

氏名の自書
氏名の自書が要求される趣旨は、遺言者本人を明確にし、遺言内容が遺言者の真意に出たものであることを明らかにするためだけです。なので、氏と名を併記するのが原則ですが、氏又は名だけであっても本人を識別することができるものであれば良いとされています。なお、通称、芸名、雅号でも本人の同一性が識別できれば有効となります(東京弁護士会相続・遺言研究部「実務解説相続・遺言の手引き」日本加除出版171頁)。

押印
押印が要求される趣旨も、氏名と同様です。なので、印章は遺言者のものであれば、実印でなくても認印でも良いとされています。指印でも足りるとする判例もありますが、本人死亡後に本人の指印であるかどうかを確認することは簡便になし得るものでもないので、できるだけ印章によるべきであるとされています(最小1判平成元年2月16日-平成元年度最高裁判例解説民事篇20頁以下)。

押印が遺言書本文以外に押されていた場合はどうでしょうか、有効とされた例と無効とされた例を指摘しておきますが、遺言全体の状態から判断されているようです。

【有効とされた例】
遺言書本文の入れられた封筒の封じ目にされた押印をもって、民法968条1項の押印の要件を満たしており、有効とされた(最2小判平成6年6月24日家月47巻3号60頁以下)。
【無効とされた例】
遺言内容の記載されていた書面には署名押印を欠き、検認時に既に開封されていた封筒には遺言者の署名押印がある場合の遺言は、同条項の方式を欠くものとして無効とされた(東高判平成18年10月25日判タ1234号159頁以下)。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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