賃貸等不動産の時価開示①適用範囲

掲載日 : 2013年7月30日

企業会計基準が国際化していく中で、不動産関連に関する会計基準も改正が進んでおります。その中で、平成22年3月期から適用開始となったいわゆる「賃貸等不動産の時価開示」について改めて考察してみましょう。

企業会計基準のグローバル化
近年、IFRS(国際財務報告基準)が企業会計基準のグローバル・スタンダードの地位を確保しつつあることは皆さんご承知のとおりだと思います。今後ますますIFRSを導入する国が増加していくと予想される中、我が国においても、平成27年度の強制適用は見送られたものの、IFRSへのコンバージェンス(日本の会計基準をIFRS基準との差異がなくなるように修正していくこと)が図られるなど、日本基準とIFRS基準との差異が少なくなってきています。
また、平成25年6月20日に企業会計審議会が「IFRSへの対応のあり方に関する当面の方針」を公表、次いで6月24日には自民党が「IFRSへの対応についての提言」を公表するなど、日本基準の国際化は必須の状況となっています。

賃貸等不動産の時価開示
従来、日本における投資不動産については、取得原価基準による会計処理を行い、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合に、一定の条件のもとで回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額するという減損処理が行われてきました。つまり、基本的には原価基準で評価してかまいませんが、「時価」が大幅に減額した場合には評価を下げなさいということです。
この点、IFRSにおける投資不動産については、原価評価と時価評価の選択適用とされ、原価評価を適用する場合には時価を注記することになっています。

そこで、会計基準の国際的な転換をはかるため、平成20年11月28日、企業会計基準委員会から「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」が公表されました。
その結果、投資不動産や遊休不動産といった「賃貸等不動産」に、当該会計基準が適用され、平成22年3月31日以後終了する事業年度末に係る財務諸表から、時価を注記することを義務付けられています。

 

賃貸等不動産の範囲
賃貸等不動産とは、棚卸資産に分類されている不動産以外のものであって、賃貸収益又はキャピタル・ゲインの獲得を目的として保有されている不動産をいいます。従いまして、物品の製造や販売、サービスの提供、経営管理に使用されている場合は賃貸等不動産には含まれません。
すなわち、以下の状態にある不動産が賃貸等不動産に含まれます。
1.貸借対照表において投資不動産として区分されている不動産
2.将来の使用が見込まれない遊休不動産
3.上記以外で賃貸されている不動産

また、貸借対照表における勘定科目との関係では以下のように整理されます。

賃貸等不動産の時価等の開示対象となる企業
金融商品取引法により、有価証券報告書等の開示が求められる以下の企業が対象となります。

  • 上場会社
  • 上場会社の連結子会社等
  • 会社法上の大会社(資本金5億円以上又は負債200億円以上の会社)
  • 委員会設置会社(会計監査人設置会社)

【関連コラム】
賃貸等不動産の時価開示②必要性の判断
賃貸等不動産の時価開示③注記事例

【コラム執筆者】
田中豪経営会計事務所 / 船場中央税理士法人
公認会計士, 税理士 田中 豪