子供のいない夫婦の遺言③具体的な遺言の方法(預貯金)

掲載日 : 2013年7月27日

預貯金の遺言方法
それでは、Bの預貯金についてはどうでしょうか。
「子供のいない夫婦の遺言②」に記載した、香川判決によれば「預貯金をAに相続させる」と遺言さえすれば、Aとしては「直ちに…相続により承継される」ので、預貯金の払戻し請求も直ちにできるということになりそうです。

子供のいない夫婦の遺言②具体的な遺言の方法(不動産)

(1)銀行の実務
ところが、香川判決がなされて20年以上が経過し、その理解は大分浸透したかに思えますが、未だ金融機関関係者の行う解説では「原則として、その預金について払戻し等の相続手続は、当該特定の相続人のみと行えば足りるが、銀行実務では、利害関係人の了解を得るとともに相続手続をする。」とされています(鈴木友法・みずほ銀行法務部「遺言書の法的性質と窓口の実務対応」銀行法務704頁5頁以下)。

仮に、遺言が無効であった場合、無権利者に対する払戻しとして、払戻しが無効になり、しかも、準占有者に対する弁済(478条)として免責されるには無過失の要件を充たさないといけないので、安全策を講じたいというのが本音のところかと思います。

ただ、中小企業庁が検討に参加している事業承継協議会の事業承継関連相続法検討委員会は、平成18年に「遺言に基づく預金債権の払戻請求に対する金融機関の対応について」という報告を出しました(金融法務事情1783号30頁以下)。

そこでは「預金を相続させる」という遺言には、遺言執行の余地がある(香川判決を素直に読めば、この点には若干の疑義が残ります。その指摘をするものとして、東高判平成15年4月23日参照)ことを前提に、公正証書遺言にその旨の記載がなされ、第三者性・中立性を備える遺言執行者の指定がなされていれば、その払戻し請求には応ずべきであり、仮に後に遺言の効力が否定されても、特段の事情のない限り、金融機関は免責されるとされました。

それを受けてからか、前掲清水解説も「遺言執行者がいる場合は遺言執行者とともに相続手続をしたりしています。」としています。

(2)公正証書の活用
従って、Bが「預貯金をAに相続させる」と遺言する場合でも、それは公正証書によることが望ましく、第三者性、専門性を有する者を遺言執行者として指定することが安全です。この点は、弁護士にご相談ください。

前述したとおり、香川判決の趣旨は「遺産の全部」について「相続させる」旨の遺言がなされた場合にも及ぶとされていますので、Bとしては、預貯金を含む「全ての財産をAに相続させる」とすれば足ります。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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