子供のいない夫婦の遺言②具体的な遺言の方法(不動産)

掲載日 : 2013年7月26日

不動産の遺言方法
では、具体的にはどのような遺言をすればいいのでしょうか。

実務上、よく行われているのは、Aが死亡した場合の甲不動産について「甲不動産をBに相続させる」という遺言です。

登記の実務
特定の遺産が不動産である場合、遺言に「相続させる」旨の記載があれば、受益者である相続人が単独で登記手続を行うことができます。
※「遺贈する」とした場合、他の共同相続人と共同して登記手続きする必要があります。
なお、従前は「相続させる」と「遺贈する」場合とでは、登録免許税に違いがありましたが、平成15年4月1日から同率(1000分の6)となりました。

特定の不動産を「相続させる」場合の効果
裁判所も登記の実務のような取り扱いを認めることとなりました。

最小2判平成3年4月19日は、この場合の甲不動産のように「特定の遺産」についてなされた「相続させる」旨の遺言は、遺産分割方法を定めた遺言(908条)ではあるが「他の共同相続人も右の遺言に拘束され、これと異なる遺産分割の協議、さらには審判もなし得ないのであるから…特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該相続人に相続により承継されるものと解するべきである」としました(裁判長の名前を採って、香川判決とされています。)。

すなわち、特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言がされた場合、当該遺産は被相続人の死亡と同時に当該相続人に承継されることになるので、その遺産についての遺産分割協議をすることはできず、裁判所に審判が申し立てられたとしても裁判所は審判することはできないということになります。

このため、「直ちに…相続により承継される」のですから、遺産分割協議を経なくても、甲不動産についてBは単独で相続登記できるということです。

従前、遺産分割方法の指定(908条)というのは、遺産分割協議を前提としていると考えられていたため、仮に「相続させる」旨の遺言の法的性質を遺産分割方法の指定と考えるならば、遺産分割協議をしなければ登記手続が出来ないのではないかと考えられていました。ところが、香川判決は「相続させる」旨の遺言を遺産分割方法の指定と考えても、遺産分割協議は不要であるとした訳です。その意味で画期的な判決でした。

この香川判決の趣旨は「遺産の全部」について「相続させる」旨の遺言がなされた場合にも及ぶとされています(秋武「いわゆる相続させる旨の遺言をめぐる裁判例と問題点」判タ1153号60頁以下。

そして、このような場合は「遺産分割方法の指定」というよりは、端的に「相続分の指定」がなされたと考えるのが自然ですが、その場合でも「他の共同相続人も右の遺言に拘束される」のは同様ですから、Aとしては、甲不動産を含む「全ての財産をBに相続させる」とすれば、相続というメリットのみを享受でき妥当ということになります。

 

※仮に、ABが内縁関係に留まっていた場合、Aが死亡してもBはAの相続人ではないので、甲不動産を「相続させる」ということはできません。このときは、甲不動産を「遺贈する」としかしようがありませんが、遺言執行者を置けば、それは「相続人の代理人とみなす」とされている(1015条)ので、相続人である弟のCに代わってBへの移転登記を「共同申請」してくれます(不動産登記法60条)。その意味で、遺言において遺言執行者の記載を忘れないというのがポイントです。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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