子供のいない夫婦の遺言①問題の所在

掲載日 : 2013年7月25日

質問
私(A)は、高校時代に同級生として知り合った妻Bと40年前に結婚しましたが、ともに子供はいません。2人とも両親は既に死亡しており、血縁といえば私の弟Cと妻の妹Dがいるだけですが、C、D共に10年近く親交もありません。私たちも今年で65歳を迎えたので、そろそろ遺言を残したいと思っています。その際のアドバイスをお願いします。
ちなみに、私たち夫婦は、共稼ぎで互いの収入を振り分けており、私分は住宅ローンの返済に妻分は貯蓄に、それぞれまわしていました。そこで、お互いの財産としてはそれぞれありますが、主なものとしては、私名義の土地建物(時価4,000万円相当、住宅ローン完済。以下、甲不動産といいます。)と妻名義の預貯金4,000万円があります。

回答
Aさんについては「全ての財産をBに相続させる」と遺言すればいいです。Bさんについても「全ての財産をAに相続させる」と遺言するのが一般的ですが、解説に述べる問題点もあるので、別途弁護士に相談することを勧めます。
なお、共同遺言は禁止されているので、自筆証書遺言で対応するというのであれば、別々の紙に遺言を書くべきであり、それを入れる封筒も別々にした方が安全です。

問題の所在と解決策
(1)法定相続分
ABともに子供がいないので、例えば、Aが先に死亡した場合、配偶者である妻Bとその弟Cが相続人になります(民法889条1項2号、890条)。それぞれの法定相続分はBが4分の3でCが4分の1(900条3号)ですから、このまま放っておくと、Cが、甲不動産について4分の1を相続する可能性があります(仮に、Bが先に死亡した場合も同様で、Dが、預貯金の内1,000万円を相続する可能性があります。)。

(2)相続分の指定
しかし、Cとは10年近く親交もないので、このような結論をAは望んでいないでしょうし、残されたBの地位も不安定になります。幸いにも兄弟には遺留分はない(1028条)ので、遺言によってBに、財産の全部を遺贈(964条、ちなみに、相続人も遺贈を受けることはできます、903条1項参照)する、乃至は、Bの相続分を4分の4と定める旨の指定(902条1項、これを「相続分の指定」といいます。)をすれば、甲不動産を含む全てのAの財産は全てBのものということになります(Bが先に死亡した場合も同様です。)。

このような場合は、遺言の実益がある場合の1つとして指摘され、また、子供のいない夫婦が増えた現代において増加している遺言の類型です(清水「公正証書遺言の傾向と実務」公証126号46頁以下)。

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【コラム執筆者】
村上・新村法律事務所
弁護士 村上博一

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