濫用的会社分割と債権者の対抗手段

掲載日 : 2013年6月13日

債権者の対抗手段
「濫用的会社分割」に対して債権者のとりうる手段としては、以下のようなものがあります。

(1)会社法22条1項の類推適用による責任追及
まず、新会社が旧会社の商号を引き続き使用する場合には、会社法22条1項(事業譲渡の場合の規定ですが、判例上会社分割にも類推適用されます)により、新会社も旧会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負います。この規定を利用して、旧会社の債権者が新会社に対して債務の弁済を求めることが考えられます。
もっとも、新会社が遅滞なく旧会社の債務を弁済しない旨の登記をした場合や、その旨の通知を債権者に行った場合は弁済責任を負いませんので、当初から旧会社の債務を免れることを意図してこのような対策を講じている新会社には請求ができません。

(2)破産法160条1項1号の否認権行使
次に、旧会社が破産した場合には、会社分割を「破産者が破産債権者を害することを知ってした行為」として、その効力を否認することが考えられます。裁判例においても、会社分割による財産移転について否認権行使を認めたものがあります。しかし、このような否認権は旧会社について破産手続が開始されていなければ行使することができません。また、否認を行使するのは破産管財人ですので、個々の債権者にそのような権利を与えられたものではありません。

(3)詐害行為取消権(民法424条)
そこで、債権者が旧会社の財産を保全するために、会社分割が詐害行為(債権者を害する行為)であるとして、新会社への資産移転の取消しを裁判所に請求するケースが散見されるようになりました。これは、民法上の「詐害行為取消権」という制度を利用し、取消権を行使した者との関係では会社分割による資産移転を取消す(なかったものとする)というものです。
このような詐害行為取消権が会社分割にも適用されるのかという点は、裁判上の争点となっていましたが、最高裁判所の平成24年10月12日付判決は、会社分割も詐害行為取消権の対象となることを認めました。

会社分割の際の注意点
以上のように、会社分割というスキームには、優良な資産を切り離して事業の維持や再建を図るという目的の達成のために非常に有効である反面、詐害的との評価を受けやすいものであるという点に留意する必要があります。
そこで、会社分割による資産の切り離しスキームを実行する際には、債権者に対してスキームの内容と意図について十分に説明を行って、詐害の意図がないことを理解してもらったうえで、債権者の同意を得て行うことが重要です。

なお、今後行われる会社法の改正においては、このような濫用的な会社分割が行われた場合の残存債権者を保護する制度が新たに設けられる予定となっていますので、法務的にはこのような法改正についても注意を払う必要があります。

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【コラム執筆者】
ソラリス法律事務所
弁護士 松村 直哉