濫用的会社分割とは

掲載日 : 2013年6月12日

濫用的会社分割とは
ところが、会社分割により、優良資産を新会社に移転し、債務は旧会社に残すという手法をとった場合に、害されるはずのない債権者において現実には回収が困難となる、という事態が生じています。このような会社分割を「濫用的会社分割」と呼ぶことがあります。

濫用的会社分割の代表的なスキームは次のようなものです。

濫用的会社分割のスキーム

まず、会社分割の手法としては、旧会社に不良資産(α資産)と債務を残し、新会社に優良資産(β資産)を移転するという手法を用います(ステップ1)。
この場合、旧会社は、新会社に優良資産(β資産)が移転する代わりに、新会社の株式を取得することになります。従って、旧会社の資産は、現実の優良資産の部分が新会社の株式に変化することになりますが、会社分割を行った時点では、この新会社の株式の評価は優良資産(β資産)の価値と同等になりますので、結果的に旧会社の資産の評価に変化は生じません。従って、このような場合、会社法は旧会社の債権者を害するおそれのないケースとして、債権者保護手続を要求していないのです。

この点に着目し、このような会社分割を債権者に何ら通知することなく実行した上で、秘密裏に新会社の株式価値を低下させるような行為(株式の大量発行など)を行い(ステップ2)、その上で、旧会社が保有する新会社の株式を非常に安い価格で新会社の経営陣などが買い取る(ステップ3)などという手法を採ります。

これにより、旧会社はほとんど無価値な資産(α財産と、安価な株式譲渡対価)を残すのみとなる一方、新会社は、旧会社とは無関係な会社として独立を果たす、ということが可能となってしまうのです。
旧会社の債権者は、そのようなスキームを実行されてしまえば、結果的にはほとんど無価値となった旧会社に対する請求権のみが残ることとなり、回収が困難となってしまいます。

このような「濫用的会社分割」に対して債権者が取りうる手段を次で説明したいと思います。

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【コラム執筆者】
ソラリス法律事務所
弁護士 松村 直哉