マンションの建築禁止の仮処分における基準

掲載日 : 2013年5月22日

それでは、建築禁止の仮処分の申立てについて、裁判所はどのような基準のもとで判断をしているのでしょうか。

実務における基準
裁判所は、居宅の日照・通風は、快適で健康な生活に必要な生活利益であって、法的な保護の対象になる(最高裁昭和47年6月27日)としながらも、それは無制限に保護されるわけではなく、侵害行為が社会生活上辛抱すべきであると考えられる範囲(受忍限度)においては差止めや損害賠償の対象にならないとして、侵害行為が受忍限度を超えるかどうかという点を実務上のひとつの基準としています。

そして、受忍限度を超えるか否かの判断においては、①日影規制違反の有無、②被害の程度、③地域性、④加害・被害回避の可能性、⑤加害・被害建物の配置構造等、⑥加害・被害建物の用途、⑦先住関係、⑧双方の交渉経緯等の要素を総合的に考慮されることになります。

業者として注意すべき点
このように、受忍限度を超えるか否かの判断においては、様々な要素が総合的に考慮されます。したがって、マンションを建築しようとしている地域が日影に関する規制がない地域であるからといって、近隣住民の日照権に対する配慮が不要となるわけではありません。裁判例においても、「近隣商業地域であっても日照権を含む住居環境を大きく侵害しながら、法的な日影規制がないことをもって、権利侵害がないとするのは許されない」という指摘がされているところです。

確かに、日照権等を初めとする近隣住民の権利を一切侵害することなくマンションの建築を進めることは不可能であり、また近隣住民の全ての意見に耳を傾けていては建築が進まない、というのが現実かもしれません。

しかし、法律さえ守っていればよいという姿勢では近隣住民の理解を得ることはできません。住民側からの相談を受けていると、そういった業者の姿勢が紛争の原因のひとつとなっていることは否めないと考えます。業者には、マンション建築に際して、建設計画説明書の配布、説明会の開催、住民側の意見をとりいれた計画の変更を行う等の、地域住民との摩擦を軽減するための努力が求められるのではないかと感じています。

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【コラム執筆者】
アクシス国際法律事務所
弁護士 三村 雅一