賃貸借契約において自力救済(追い出し)が認められる場合

掲載日 : 2013年5月13日

判例で自力救済が「例外的に許され」たケースには以下のような場合があります。

1.賃借人が,賃貸借契約で定められた使用目的とは異なる目的で賃借物件を使用しようとし,建物本来の構造上,その保存や他の賃借人の貸室の使用等に重大な支障を生じさせることとなるタイピスト教習所の開設を強行しようとした際に,賃貸人がその開設を妨げる緊急措置として,賃貸人が設置した看板に目隠しをしたり,貼り紙を剥ぎ取った行為が自救行為として違法性がないとされたケース(東京高判昭和41年9月26日 判例タイムズ202号177頁)

2.建物をレストランクラブとして賃貸していたところ,賃借人が約1年にわたって合計579万余円の賃料を滞納した上,営業も中止し所在不明であったことから,賃貸人が許可なく同建物に立ち入ることを禁じる旨の告示書を掲示し,ドアの鍵を取り替えて賃借人の出入りを妨げた行為が賃貸人の権利確保措置として不法行為を構成しないとされたケース(東京高判昭和51年9月28日 判例タイムズ346号198頁)

3.共用部分である廊下に無断で荷物を置いていたアパートの賃借人に対し,賃貸人が再三撤去を催告したにもかかわらず,賃借人がそれを無視したことから,賃貸人が同物品を撤去した行為が社会通念上許容されるとされたケース(横浜地昭和63年2月4日 判例時報1288号116頁)

上記で紹介したケースにおいては,緊急措置として自力救済を行う必要性,実際に執られた自力救済行為の相当性,自力救済行為によって賃借人が被る損害の内容等について具体的検討がなされた上で,自力救済行為が認められています。
このように,自力救済が許される場合とは非常に限定されていると言えます。

そこで,近時,賃貸借契約の特約として,「賃借人が賃料を滞納した場合には,賃貸人は賃借人の承諾を得ずに建物内に立ち入り,適当な処理をとることができる。」といった旨の条項(自力救済条項)が定められている場合があります。果たして,このような特約を定めることで,家賃滞納問題は解決できるのでしょうか。次回はこのテーマについて取り上げます。

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【コラム執筆者】
アクシス国際法律事務所
弁護士 三村 雅一