認知症の親の不動産を売りたいが?~成年後見制度~

掲載日 : 2013年4月30日

これまで、親が1人暮らしをしていたけれども、認知症が進んで施設に入らないといけなくなった、もう自宅に戻って住むことは無理だろうから、親の不動産を売却して、施設に入るための一時金にしたい―

よく聞く話だと思いませんか?
しかしながら、親の認知症が相当程度進行していて、親に「自分の財産を管理・処分する能力」がなくなっているような場合には、不動産を売却することはできません。

意思能力とは?
不動産を売買するのは「法律行為」であり、法律行為を行うためには、意思能力が必要です。意思能力というのは、法律行為をするための正常な判断能力のことです。

最近は、不動産の売買や、所有権移転登記をするときには、「本人の意思確認」が必ずなされますので、売買契約を締結する本人に、正常な判断能力がなければ、契約を締結することができません。

以前は、実印と印鑑証明書があれば、必ずしも本人の意思確認を行わない時代もあったようですが、最近では、意思確認をせずに実印と印鑑証明書だけで不動産の売買契約が締結されることはあり得ないと思われます。このように、本人の意思確認が厳格になったのは、実印や、印鑑証明書を自由に持ち出せる立場にある人が、勝手に本人の名前で契約をして、本人の財産を費消することを防ぐことも1つの目的になっています。

意思能力のない人の不動産を売るには?
そうはいっても、親の不動産を売ることは、施設への入居金を作るために必要なことなのに、売れないとなれば困りますよね。

このような場合には、契約をしようとする本人に「成年後見人」を選任して、その成年後見人が本人を代理して契約を締結することになります。

成年後見人選任の手続
成年後見人を選任するためには、家庭裁判所で手続をする必要があります。本人との一定の関係のある人(親族等)が申立人となって、本人の戸籍謄本や診断書(意思能力に関するもの)を提出し、裁判所が成年後見人を選任します。

親族間に争いがなければ、申立人が成年後見人となったり、申立人が候補者として推薦する人を成年後見人となったりしますが、親族間に争いがあると、裁判所は、弁護士等、本人たちと利害関係のない第三者を成年後見人に選任します。

成年後見人就任後は不動産も自由に売買できる?
家庭裁判所で選任された成年後見人は、本人の代理人として、契約の締結手続等ができるようになります。しかしながら、本人の居住用不動産を売却するには、家庭裁判所の許可が必要です。居住用不動産は、本人の生活の本拠であり、その処分が本人に多大な影響を及ぼすからです。

本コラムの例に出したような不動産の売却は、裁判所が最も慎重に許可・不許可を判断するタイプの売却だと思われます。施設に入ることが本人の利益といえるのか、本人の気持ちはどうか、子どもたちが親の面倒を見るのがイヤだというだけで、親の気持ちを考えずに施設に入れようとしているのではないか…等が考慮された上で、判断されることになります。

【コラム執筆者】
フォーゲル綜合法律事務所 堺事務所
弁護士 藤田 さえ子