相続不動産の換価分割のための方法と贈与税

掲載日 : 2013年4月5日

お父さん,お母さんが遺言書を残さずにお亡くなりになったが,子供さんらは全員ご実家を出て独立され,それぞれ住宅をお持ちのため,ご実家の家と土地を売却処分して,売却代金をごきょうだいで分けたいとのご相談をお受けすることがあります。
このようなケースでは,子供さんらは,どのような方法を選択できるのでしょうか?

ご実家の家と土地を売却処分する方法
ご実家の家と土地(以下「相続不動産」といいます。)を売却処分することを希望される場合,子供さんらは,遺産分割協議において,換価分割の方法を選択されることになります。

そして,子供さんらは,相続不動産を法定相続分に従って共有取得し,子供さんら全員が売主となって相続不動産を売却されることになります(以下「共有名義で処分する方法」といいます。)。売却後,売却代金から仲介手数料等の売却に要する一切の費用を差し引いた残額を法定相続分に従って分け合います。もちろん,このあたりの内容は,遺産分割協議書に盛り込む必要があります。

ただ,共有名義で処分する方法を採られる場合,子供さん全員が揃わなければ,売買契約の決済など,相続不動産の売却に必要な各種の手続を行うことができません。そのため,子供さんらがご実家から遠く離れて暮らしておられるようなケースでは,この方法では不便です。

そこで,換価の便宜上,子供さんのうちのお1人の名義で相続登記をして,その後,相続不動産を売却し,ごきょうだいに売却代金を分配する方法(以下「単独名義で処分する方法」といいます。)が考えられます。

便宜的に1人の名義で相続登記をした上で売却処分する方法
単独名義で処分する方法を選択される場合,お気を付けいただきたいのが税務面です。なぜなら,相続不動産の売却代金を他のごきょうだいに分配される場合,贈与税の課税が問題となりうるからです。

もっとも,国税庁のホームページの以下のQ&A(「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」)によりますと,次のような説明がなされています。

「共同相続人のうちの1人の名義で相続登記をしたことが,単に換価のための便宜のものであり,その代金が,分割に関する調停の内容に従って実際に分配される場合には,贈与税の課税が問題になることはありません。」

この説明では,家庭裁判所での遺産分割調停のケースが想定されていますが,共同相続人どうしの遺産分割協議のケースでも,同様の説明になるようです。つまり,換価の便宜上,共同相続人のうちの1人の名義に相続登記をして,その後,相続不動産を売却し,遺産分割協議の内容どおり,に従って他の共同相続人に売却代金を分配すれば,贈与税の課税は問題になりません。

そうしますと,子供さん全員で遺産分割協議を行い,そのうちのお1人の名義で相続登記をして,その後,相続不動産を売却し,遺産分割協議の内容に従って,ごきょうだいに売却代金を分配された場合には,贈与税の課税を心配される必要はありません。

もっとも,単独名義で処分する方法を選択される際には,遺産分割協議書の中に,相続不動産の売却に要する費用の分担及び売却代金の分配について適切な条項を設けておくことが必要になります。

贈与税の課税が問題にならないようにするためには,遺産分割協議書の内容について,弁護士などの専門家に相談されることをお勧めします。

さらに,相続不動産を売却される場合には,譲渡所得税の課税も問題になりますので,是非,税理士にもご相談ください。

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【コラム執筆者】
えにし法律事務所
弁護士 矢倉 良浩