遺産分割における相続税評価額と不動産の評価

掲載日 : 2013年3月13日

相続財産(遺産)を分割する方法には以下のものがあり、不動産を含む相続財産を分割するにあたって、一般的には会計士や税理士が試算する相続税評価額によって不動産の価値を求め、これに基づき分割が進みます。

現物分割 個別の相続財産の取得者を決定する方法
換価分割 相続財産を売却して現金で分割する方法
代償分割 共同相続人のうち一人または数人が相続財産を取得し、他の共同相続人に代償金を与える方法
共有 相続財産を各共同相続人の共有とする方法

争いがある場合
しかし、争いがある場合の相続財産の分割にあたって、現物分割で不動産を取得する共同相続人は自分がその不動産を取得した場合のメリットやデメリットを考慮します。
また、代償分割では、代償金を与える共同相続人も、また代償金を貰う共同相続人も、その代償金が適正な金額であるか、すなわち代償金の前提となった相続税評価額が「時価」なのか、それぞれの立場から妥当性を判断しようとします。
ところが、不動産は現金や有価証券とは異なり、簡単にその価格を把握することができないことが多く、上記のいずれの分割方法においても、共同相続人の間で不動産価格に対する意見が異なり、問題が深刻化するケースが見受けられます。

時価に基づく遺産分割協議の必要性
そもそも、不動産の価格は一物四価とも一物五価とも言われ、一つの不動産について複数の価格が存在していると言われます。複数の価格が存在する要因には、①個人の主観、②客観的指標として相続税路線価や固定資産税評価額の存在、③収益物件の存在、④共有持分など特殊な形態などがあり、これらが不動産価格の把握を困難にしていると言えるでしょう。

不動産を含む相続財産については、適正な時価により遺産分割協議を行うことが必要です。
特に現物分割については、不動産を取得した者が当該不動産を売却することも考えられ、分割の前提となった相続税評価額と売却金額に大きな差がある場合、別の争いに発展する可能性も考えられます。

また、相続税評価額は、土地については国税庁の相続税路線価を、建物については固定資産税評価額を基礎として算出されますが、以下のような点に留意する必要があります。

土地
土地には、面積が大きい、角地、不整形といった様々な個別性があります。
相続税評価が財産評価基準等の客観的指標により、こうした個別性にも対応しているといっても、それはあくまでも相続税の計算を目的としたものであるため、相続税評価額が必ずしも「時価」を適正に表しているとは限りません。

土地価格の評価にあたって、角地、不整形等の個別性について、プラス・マイナスを付ける際、相続税評価額を求める際の計算を使用することも一つの方法です。
しかし、角地や不整形といった個別性は、その土地が属する地域や不動産の用途等によって加減する額も異なってくるものであり、時価については、本来画一的な計算式で求め得るものではありません。

建物
建物には、毎年一定額で減額する、といった画一的な経年劣化のみを考慮した計算方法では把握しきれない減価や大規模修繕により価値の変動などがあります。例えば、用途や利用方法により劣化が激しい建物は経年劣化で計算した場合よりも資産価値が低いと言えます。一方、大規模修繕を行っている建物は経年劣化で計算した場合よりも資産価値が高い可能性があり、こうした要因を加味する必要があります。

収益物件・共有不動産
収益物件については土地建物一体とした不動産が収益(賃料)を生み出しているため、土地建物一体で不動産を把握する必要があります。このため、土地価格と建物価格を分離して評価することは不動産の性格になじむものではありません。
また、共有不動産等については 権利関係が複雑であることから、評価方法については、特に留意する必要があると言えるでしょう。

以上のことから、「時価」の適正な把握にあたっては、不動産鑑定士に価格調査を依頼することも必要であると思われます。

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【コラム執筆者】
株式会社クラヴィス鑑定事務所
不動産鑑定士 伊東 玉喜