不動産の時価評価が困難な理由

掲載日 : 2013年3月11日

不動産の価格は、一物四価とも一物五価ともいわれ、時価の他に公的価格が存在しています。
こうした複数の価格が存在することに加え、以下の理由から、一般に不動産の価格を把握することが困難であると言われています。

個人の主観
不動産に、所有者や利害関係人(共同相続人など)の主観が入ると、その価値が把握しにくくなると言えます。
例えば、相続財産が生まれ育った家である場合や取得価額を知っている場合等、個人の主観や思い入れがある場合、各人が妥当とする不動産価値が、実際の価値から乖離する可能性もあります。
また、所有者や利害関係人にはそれぞれの立場と主観があるため、各人が想定している価格水準が異なる場合も多く見られます。

客観的指標としての相続税路線価や固定資産税評価額
個人の主観と異なり、客観的な価格と言われているものが相続税路線価や固定資産税評価額といった公的価格です。
相続税路線価は土地の価格を表示するもので、国税庁から発表されており、ホームページなどによっても閲覧することができます。
一方、固定資産税評価額は各自治体に登録された固定資産課税台帳に基づく土地と建物等の価格を言い、原則として所有者が納税通知書などを通じて把握することができます。
これらの公的価格は客観的である反面、各公的価格の目的により、同じ土地でも価格水準が異なる場合があります。
また、公的価格の評価時点と現時点とのタイムラグが避けられないため、「時価」と乖離する場合があります。例えば、相続税路線価の評価時点は毎年1月1日ですが、各人が時価を知りたい時期がその年の10月であった場合、10カ月のタイムラグがあり、この間に価格が変動していた場合、相続税路線価は時価と乖離していると言えるでしょう。

 

収益物件の存在
戸建住宅の場合、土地が○○万円、建物が○○万円、と言うように土地建物を分離して把握することも可能です。
しかし、賃貸マンションなどの収益物件の場合においては、土地建物一体から生まれる収益(賃料など)により価格が決定されるものであり、土地建物ごとに価格を把握することは不動産の性格になじむものではありません。
また、収益価格は土地の取得価格と建物の建築費との合計額とは大きく異なる場合があります。
収益物件の価格は不動産から得られる収益を利回りで還元して求める方法によるものが大半ですが、不動産に精通していない限り、こうした収益物件の価格を査定することは困難と言えます。

共有持分など特殊な形態
不動産を共有にしている場合、また、一つ一つの不動産は別名義であるものの、一体として利用している場合が見受けられます。
例えば、前者であれば、土地や建物を夫婦で2分の1ずつの共有にしている場合などが相当し、後者であれば、土地は父親名義で建物が長男名義である場合、土地を父親・母親が共有し、建物を長男・父親が共有している場合等が相当します。

不動産が共有されている場合、不動産全体を売却するには、共有者全員の同意が必要となり、共有者単独では自分の持分の売却しかできません。
ただし、共有持分のみの買手を見つけることは通常困難です。したがって、不動産を共有にした場合、共有持分の価値は相当程度低くなることが多く、その評価には市場における需要(引き合いがあるか)等について特別の留意が必要になります。

また、夫婦間、親子間や兄弟間においては、使用貸借契約や賃貸借契約を締結していないことが多いと思われます。
このように権利関係が不明確であったり、複雑である場合において、共有者の一人が死亡し、その遺産を評価する際には、権利の有無の判断や評価方法をはじめとして、特に注意を要します。

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【コラム執筆者】
株式会社クラヴィス鑑定事務所
不動産鑑定士 伊東 玉喜