家賃滞納による賃貸借契約の解除

掲載日 : 2013年2月26日

不動産賃貸借契約の解除に関するルール

建物賃貸借契約は、貸主が賃貸の目的物である物件を使用・収益させ、借主がこれに対して賃料(家賃)を支払うことを内容とする契約ですので、借主は、貸主に対し、契約で定めた金額の家賃を、契約で定めた時期に支払う義務を負います。

したがって、借主が決められた時期に家賃を支払わず、家賃を滞納することは、「債務不履行」に当たります。

契約において債務不履行があった場合、民法の原則によれば、相手方は相当の期間を定めて、債務を履行するように求め(これを「催告」といいます。)、その期間内に債務の履行がない場合は、契約を解除することができます(民法541条)。

ただ、不動産の賃貸借契約については、解除された場合に借主が被る損失・影響が大きい(住む場所や事業の場所を失うことになります)ので、判例上、借主の債務不履行があっても、その程度が貸主・借主間の信頼関係を破壊する程度に至るものでなければ債務不履行による解除が認められないというルールとなっています(信頼関係破壊理論)。

したがって、賃貸借契約書に「借主が賃料の支払いを○回怠ったときは,貸主は契約を解除できる」と定められていて、実際に借主が契約書に書かれた回数、賃料の支払いが遅れたとしても、その事情等に照らして、当事者間の信頼関係を破壊するに至らない程度のものと判断されれば、契約の解除が認められない可能性があります。

また、賃貸借契約書に「賃料の支払いを1ヶ月分でも怠れば、催告をしなくても賃貸借契約を解除できる」といういわゆる「無催告解除特約」が規定されていることもありますが、この特約による解除は、契約を解除するに当たって催告をしなくても不合理と認められない事情がある場合に認められるというのが判例の考え方ですので、注意が必要です。

借主が「滞納家賃は敷金から引いてほしい」と言うことはできるか?

借主が家賃を払えず滞納している場合、借主が「契約時に差し入れた敷金から滞納家賃を引いてほしい」と言って、契約を解除されることを避けようとする場合があります。

しかし、結論から言うと、この借主の要求は通りません。

契約時に敷金が差し入れられ、契約終了時にこれが返還されることになっていたとしても、敷金は、建物の明渡しまでに発生した損害や明渡しまでの未払賃料を担保するためのもので、契約存続中は、敷金を滞納賃料に充てるかどうかは貸主の自由です。貸主は、貸主の要求に応じる必要はなく、借主が滞納家賃を支払わない限り、債務不履行状態が続くことになります。

したがって、たとえ敷金を差し入れていたとしても、借主による賃料の滞納が上記解除の要件を満たす場合、貸主による賃貸借契約の解除は可能ということになります。

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【コラム執筆者】
岡村法律事務所
弁護士 岡村 勇人