賃貸不動産に買い手が見つかった!~賃借人との退去交渉

掲載日 : 2013年1月30日

賃貸不動産(収益物件)を売却するときには、賃借人を入居させたまま売却する場合と、賃借人に退去してもらって売却する場合があります。

賃借人を入居させたままの売却

賃借人を入居させたまま売却する場合は、不動産の所有権とともに、売主の「賃貸人の地位」がそのまま買主に移転しますので、賃借人との間の賃貸借契約は、そのまま不動産の買主との間で継続することになります。ですから、この場合は、賃貸人から賃借人への敷金・保証金の返還債務なども考慮したうえで、不動産の売買代金が決められます。

賃借人を退去させてからの売却

問題となるのは、賃借人を退去させて、更地でその土地を買いたい、というような買い手が現れた場合です。

たとえば、昭和30年代頃に建築されたような5軒続きの長屋や、いわゆる「2戸イチ」の物件に、高齢の方がもう50年ほど住んでおられるが、建物も老朽化してきて管理も大変だし、貸主は、「そろそろ手放したい…」と考えていたとします。貸主が亡くなって、遠方の相続人が相続する場合なども、できれば売却してしまって現金化したいと思うでしょう。そんなところに、思った以上に高値で買いたいという申入れがあったと想定してみましょう。

賃貸借契約の解約申入れには正当事由が必要です!

借家契約(建物賃貸借契約)は、契約書では1~2年を契約期間としていることが多いですが、所定の期間前に「期間の更新はしない」という通知をしない場合には、法律によって契約が更新されることになり、更新後は「期間の定めのない借家契約」となります(借地借家法26条)。

そして、期間の定めのない契約になった場合、賃貸人が賃貸借契約の解約をしようと思っても、解約の申入れに「正当な事由」がなければ貸主側からの解約は認められないことになります(同28条)。

正当な事由の有無は、①賃貸人・賃借人が建物の使用を必要とする事情、②借家契約のこれまでの経過(家賃の滞納の有無など)、③建物の利用状況、④建物の現況、などを総合考慮しますが、それだけでは正当事由あり、とならない場合には、⑤家主が提供する立退き料や代替物件、によって、正当事由を補強することになります。

立退き料の相場は?

上記の①から④だけで解約申入れの正当事由が認められるような場合には、立退き料は払わなくてよいですし、払うとしても低額で済むでしょう(転居に要する費用程度)。

しかし、本コラムの例のように、①賃借人は高齢であり、長年住んだ住居を変化させることが生活に与える影響が大きい、同程度の家賃で代替物件は探しにくく本件建物への居住の必要性が高い、一方賃借人は管理が大変だから売却をしたいだけである、というような事情では、正当事由はなかなか認められにくいので、立退き料はある程度高額である必要があると思われます。

【コラム執筆者】
フォーゲル綜合法律事務所 堺事務所
弁護士 藤田 さえ子