建物所有者が死亡した場合、建物で所有者と暮らしていた者は無償での居住を継続できるか

掲載日 : 2013年1月28日

建物所有者が親しい者に対し、建物に無償で同居することを許諾することは一般によく見られます。
しかし、この場合に建物所有者が死亡した場合、所有者の相続人と同居人との間で、同居人が建物での無償の居住を継続できるか否かで揉めることがあります。
その際の法律関係について解説したいと思います。

なお、以下は建物所有者が遺言を作成していないことが前提です。

同居人が建物所有者の相続人である場合
同居人が建物所有者の唯一の相続人である場合(例えば、建物所有者の相続人がその子1名である場合)、同居人は建物所有権を単独で相続し、所有者として建物での居住を継続することができます。

同居の相続人の他に建物に居住していない相続人がいる場合、各相続人が相続分に応じた割合の持分で建物を相続します。
持分権者は不動産の全部を占有することができますので、同居人の相続人は持分権を有する限り、建物での居住を継続できます。
また、この場合、特段の事情のない限り、被相続人と同居の相続人との間で、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により建物の所有関係が最終的に確定するまでの間、引き続き同居人に建物を無償で使用させる旨の合意があったと推認されます(最高裁平成8年12月17日判決)。
従って、このような推認を阻害する事情のない限り、同居の相続人は、遺産分割が終わるまでの間、非同居の相続人との関係でも建物に無償で居住することができます。

同居人が建物所有者の相続人ではない場合
例えば、建物所有者である内縁の夫が死亡した場合、同居人である内縁の妻には内縁の夫の相続権はないため、建物の所有権を相続することはできません。

この場合、内縁の夫婦間で、内縁の妻が死亡するまで建物を無償で使用させる旨の使用貸借契約が成立していたならば、同居人が建物に無償で居住し続けることができます。

但し、このような関係で使用貸借契約を書面で締結しているケースは稀です。
契約書がなくとも、内縁の夫婦間で、内縁の夫の所有する建物について、内縁の妻が死亡するまで無償で使用させる旨の使用貸借契約が黙示的に成立していたことを認めた裁判例はあります(大阪高裁平成22年10月21日判決)。
しかし、逆に、証拠や事情によっては、内縁の妻が建物を無償で使用できるのは夫が生きている間に限られる、と裁判で判断されることもあるでしょう。
その場合、相続人から建物の明渡しを求められれば、その請求が権利の濫用に当たらない限り、同居人は建物から退去せざるを得ません。

従って、同居人が建物所有者の相続人でない場合に、建物所有者が自分の死後も同居人が建物での居住を継続できるようにしたいのであれば、生前の対策が特に重要となります。

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【コラム執筆者】
弁護士法人古家野法律事務所
弁護士 古家野 彰平