賃貸マンションの借主が死亡した場合における借家権の相続

掲載日 : 2013年1月23日

アパートやマンションを貸しているときに借主が亡くなられた場合、借主との間の賃貸借契約はどうなるのでしょうか。
高齢化社会が進み、最近では高齢者が夫婦二人でアパートを借りて生活している世帯や高齢者が一人暮らしをされている世帯も増えていますので、賃貸マンション経営などをされている方にとって、このことは重要な問題であるといえます。

亡くなった借主に同居の配偶者がいる場合
無償(タダ)で建物を賃貸する契約(法律用語では「使用貸借契約」といいます。)の場合、借主が死亡すると、そのことにより使用貸借契約は終了することになっています(民法599条)。
これに対し、有償で(家賃を貰って)建物を賃貸する賃貸借契約については、借主が死亡した場合でも賃貸借契約は終了せず、借主の地位は相続人に相続されることになっています。

したがって、たとえば、夫婦二人暮らしをしていて、借主(賃貸借契約の当事者)である夫が亡くなった場合、妻は借家人の権利義務(借家権)を相続し、賃料を払ってその家に住み続けることができることになります。
この場合、貸主と妻との間で賃貸借契約書を作成しなおすことが多いのではないかと思います。

同居人が内縁の妻の場合
これに対して、残された同居人が法律上の婚姻関係にない内縁の妻だった場合はどうでしょうか。
内縁の妻には、法律上、相続権が認められていませんので、内縁の妻は上記の場合と違い借家権を相続することはできません。
ただ、最高裁の裁判例には、内縁の妻が借主(内縁の夫)の相続人の借家権を援用して建物に居住する権利を貸主に主張することができることを認めたものもあり、内縁の妻の居住についても一定の保護が図られています。

同居人がいない一人暮らしの場合
亡くなられた借主が一人暮らしの場合も、借家権は相続人に相続されますから、貸主としては、まずは法定相続人が誰なのかを確認し、その相続人との間で借家権を引き継ぐのかどうかについて話をする必要があります。
また、賃貸借契約を引き継がずに終了させるという話になった場合には、家の中に残された家財道具等遺品の処理方法やその処理費用、建物を明渡すまでの間に発生した賃料の支払い、敷金の返還などについても話合いをする必要がありますので、相続人と連絡をとることが必要になります。

賃貸借契約では、契約時に連帯保証人を付けるのが普通で、連帯保証人が借主の相続人であることも多いので、多くの場合は、まず連帯保証人と話をすれば、解決することが多いでしょう。
しかし、賃貸借契約が長期間にわたっている場合などは、契約時から相続人の範囲や住所が変わっていたり、連帯保証人の所在さえわからなくなっていたりして、相続人を探し出すことが困難な場合もあります。
相続人の調査や話合いのために弁護士等の専門家に相談・依頼することが必要な場合もあると思います。

最後に
最近では、家賃の支払いも振込みによって行われることがほとんどで、貸主が借主と顔を合わせる機会も少なくなりがちですので、貸主が借主側の家族構成等の変化を把握しにくくになっています。
借主さんに万が一のことがあった場合に備えて、普段から定期的に借主さんから聞くなどして連帯保証人や相続人の最新の連絡先等を確認しておかれたほうがよいでしょう。

【関連コラム】
建物所有者が死亡した場合、建物で所有者と暮らしていた者は無償での居住を継続できるか

【コラム執筆者】
岡村法律事務所
弁護士 岡村 勇人