遺言能力
遺言は自分の意思表示を残しておくものなので、原則として誰でも作成が可能ですが、以下のような遺言能力がない者が作成した遺言は無効となります。
- 満15歳未満の者が作成した遺言(民法第961条)
- 精神障害などで判断力がない者の遺言(民法第963条)
- 代理人(親など)による遺言書
【被保佐人・被補助人】
原則として遺言能力があると認められているため、単独で遺言を作成することができます。
【成年被後見人】
判断力があると認められている場合(一時的に判断能力が回復している場合)、医師2人以上の立会いがあれば遺言することが可能となっています。
なお、遺言が有効に成立した後、遺言者が判断能力を失っても遺言は有効です(民法第973条)。
遺言の有効性
遺言の効力が有効であるとするためには、遺言に無効事由がないことが必要です。
上記①~③の遺言能力がない者が作成した場合のほか、以下の場合があります。
- 遺言が方式を欠くとき
- 遺言の内容が法律上許されないと)
- 被後見人が後見の計算の終了前に後見人またはその配偶者もしくは直系卑属の利益となる遺言をしたとき(民法966条)
また、遺言に詐欺や強迫といった遺言取消事由があり、遺言が取消された場合も遺言の効力が失われます。
遺言の効力発生
遺言は、遺言の成立時ではなく、遺言者の死亡の時から効力を発します(民法985条)。
また、遺言者はいつでも遺言の方式に従い、遺言の全部または一部を撤回することができます。
停止条件が付いている場合はその条件が整ったときに効力が発生し、相続人の廃除や廃除の取消は、家庭裁判所の審判があったとき、死亡時に遡って効力が発生します。
【遺言とは異なる生前の処分】
遺言で財産分配の方法を決め、その後、生前に遺言内容と異なる処分を行うことは自由です。
この場合には生前処分と重複する部分については遺言を撤回したものとみなされ、遺言の効力は発生しないこととなります。
【遺言執行】
遺言者死亡後は遺言者自身が遺言の執行をすることはできないため、遺言執行者を定めておくことをお勧めします。その際は、司法書士や弁護士など相続に利害関係のない法律に詳しい方を指定することが大事です。
相続人のうちの誰かを定めてしまうと、他の相続人から執行内容に疑いがかかり、折角定めた遺言執行者の解任(民法1019条)騒ぎになることがしばしばあるためです。
【コラム執筆者】
勝司法書士法人
司法書士
勝 猛一